現実逃避一人旅。世界各地をぶらぶらだらだら。
 
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    【2015.11.19 Thursday 】 author : スポンサードリンク
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    飽満の種子/開高健
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       「今朝の『タン・ニェン』を読みましたか?」
      「いや。読んでいません」
      「ひどいもんです。ひどいにもほどがある。ナンバー・テン。兵隊にいわせればナンバー・テンです」
      「兵隊ならナンバー・テンではなくナンバ・テン。または、ナンバ・テン・タウ(Number Ten Thau(sand)でしょうよ」
      「そう。それだ。それです。私は『タン・ニェン』の編集部に勤めている友人に電話して事情を聞いたんですが、明日もう一回その記事の続きを出すというんですね。しかも第一面にですよ。バン・メ・トットの近くで墜落したエア・ヴェトナムのスチュアデスの一人が蝶々になってサイゴンの家にもどってきたという話なんです。今日の第一面のヘッド・ラインは拳骨ぐらいもある字で、スチュアデス、蝶々になるというんですからね」
      「蝶々…」
      「乗客全員が即死した飛行機です。それは確認されているんです。事故の原因はまだわかりませんけどね。それが、乗っていたスチュアデスの一人が蝶々になって生きかえって、バン・メ・トットからサイゴンまで飛んで帰ってきて、お母さんに会って事故の模様を全部語ったというんです。大衆は新聞では小説と占いの欄しかこの国では読まないということになってますけどね。だからどの新聞もこの新聞もゴースト・ストーリでいっぱいなんですが、これはひどすぎる」
      「面白いじゃないですか」
      「何が?」
      「読者ははじめから嘘だと承知してるんでしょう。それなら突飛な嘘のほうが面白いじゃないですか。その新聞の記者はよほど頭がいいんじゃないかしら。嘘をまじめに嘘らしく書くのはむつかしいですよ。嘘をまじめにほんとらしく書くよりむつかしいです。私はそう思うな」
      「シニックだ。あなたはシニックすぎる。この国に何度も来れば、いずれ遅かれ早かれ、そうなります。そのことは私もわかってるつもりです。しかし、ヴェトナム人としては、私はがまんできない。『タン・ニェン』の友人に今朝はくどくど文句をいってやったのですが、組んだプランはもう崩せないというばかりです。明日、もう一回、マドモアゼル・パピヨンが第一面に出るらしい」
      「一ヶ月前のことですけどね。ワシントンとハノイのあいだに和平協定が成立して、日本の新聞はすべて第一面に拳骨みたいな活字で平和来ると書きましたよ。私は協定の内容を読んでとてもダメだと思ったんです。げんにその和平会議の大立者の一人だったアメリカの高官が、これは第三次ヴェトナム戦争を誘発することになるかもしれないといってるんです。ところが日本の新聞はみんな、今度こそは本物だといってサイゴンが喜びの声で沸きたってると書いているんですね。ところがその翌日から政府とコミュニストはそれぞれの旗を家やらタクシーやら椰子の木やらにたてようとしてたちまち殺しあいがはじまったですよ」
      「サイゴンはあのとき全然、騒がなかったですよ。学生も労働者も沸かなかったですね。サイゴンが沸いたのはゴ・ディン・デェムがクーで殺されたときだけです。あのときは若者が町角のあちらこちらでツイストを踊ったもんです。それは私も見ています」
      「こちらにきて私が個人的に一人ずつ会って話を聞いてみると、記者たちは誰もサイゴンが沸くなどと信じていなかったというんです。だけど、そういう記事をテレックスで送っている。信じてもいず見てもいないことをまるで事実として見たかのように一日前に記事を書いてるんです。そしてその翌日からまるでアベコベの戦争のニュースが氾濫したんですけれど、みんな平気でしたね。こういうのにくらべればスチュアデスが蝶々になったというほうがよっぽど罪が軽いですよ。私はシニックじゃない。私はリアリストですよ。日本では歓迎されない。右からも、左からも」
      「それは知りませんでしたね。旗をたてあってあちら側とこちら側が面積のとりあいで戦争を再開することになるかどうかまでを見通していたかどうかは別として、私たちはあの協定をまったく信じなかった。日本からは何十人もすでに入れ替わりたちかわり記者が何年も来てるんですからそんなことはわかってるはずだと私は思っていましたけどね。私は東京へいったことがある。新聞社を訪問したこともあります。日本の新聞にくらべると『タン・ニェン』など、巨人と小人ですよ。だけどあなたの話では、どちらもどちらということになりそうです」
      「いや。こちらのほうがいい。蝶々のストーリーのほうがいい。嘘をまじめに嘘らしく書くのはむつかしいですよ」
      【2011.08.21 Sunday 21:38】 author : 故・島田うどん
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        【2015.11.19 Thursday 21:38】 author : スポンサードリンク
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        この記事に関するコメント
        >SUCKAさん
        どもども。
        すぐに引っこんじゃってすみません。
        あんな難解な漫画の研究本…。
        ご苦労様です。
        一年前か。
        もう出てるんですか?

        >巨椋さん
        ご無沙汰してます。
        ちょいと高円寺の大陸に寄る
        というのは難しいとこで暮らしてます。
        東京に行く時は伺わせて頂きます。
        皆さんもお元気ですか?

        >小野さん
        難しい話ですね。
        最近、面白がっているのは
        歴史の延長にある今です。
        | うどん | 2012/10/15 8:43 PM |
        マルクス主義やコペルニクス天文学、フロイトなどが出そろった現代においてはもはや「アポロ神」がすでに確立していて、人間はもはや「何が美しいのか」「何が楽しいのか」を探求していく反逆の神・デュオニソス神になるしかないとされています。
        精神病は「仕事ができない」「人とのコミュニケーションができない」という二つのラインで人間の力を落とします。精神病は人間の力を確実に落とします。
        しかし、病人であれ健常者であれ「目的がないのならば同じではないか」とも言われています。
        我々は「目的のない人生を歩んでいるうどんさんが面白いと思ったことを発信する」という作業を見守りましょう。
        人間は「何が面白いのか」というものを経験して死んでいく生き物であり、これをニーチェは「永遠の繰り返し」(永劫回帰)と呼びました。
        うどんさんの永劫回帰をひたすら見ていくしかないのです。
        | 小野光太郎 | 2012/06/03 3:44 PM |
        久しぶりです。
        生きておるようですね。(笑)
        もしお近くにおられるようでしたら、たまにはみんなと一杯などいかがですか?

        ってかたまには連絡しなされ。(笑)
        | 巨椋修(おぐらおさむ) | 2011/11/13 1:23 AM |
        リブートすんなら言ってくんないと!
        未だにベルセルク研究本のオーダーが来とります!一体、グリフィスは何がしたいんだ?
        あ、生きてますよ。

        | SUCKA! | 2011/09/24 6:17 AM |
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